一歩一歩、プレス性能を改善

2018年6月19日火曜日

4段階で実施された改善プロジェクト以後、Thai Cane Paperでは、蒸気消費量低減、走行性改善、シートのドライネス向上、フェルト寿命延長、プレスパートの真空量削減といった効果が出ている。

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抄紙機のプレスパートの運転操作には多くのことが求められるが、そこには最適化する余地もある。パフォーマンスに影響する大きな要因は、プレスフェルト、ロールカバー、真空系システムであり、これらのうちのどれかを変更しても、その他の数値、ひいてはプレスパート全体のパフォーマンスにすぐに影響を及ぼす。

Thai Cane Paperは SCG社の包装事業部子会社で、タイ有数のクラフト紙メーカーである。同社の PM2プレスパートには課題があった。プレスフェルトの寿命が非常に短く、脱水能力が低く、ピックアップ時の紙落ち、トップワイヤーに湿紙がついていってしまう現象が多発していた。またフェルトマークの問題もあった。

この問題に、バルメットの Laem Chabangサービスセンターと世界各地のエキスパートと緊密に協力し、一つ一つ対処していった。

プレスフェルトと脱水に注目

2014年に設置したターボブロワのサクションボックスは吸引力が高く、既存の従来型フェルト仕様ではうまく機能していなかった。フェルト寿命は本来 60日のところわずか 35日にまで落ち、プレス後の平均ドライネスは 47.6%、ときに 44.7%まで低下することもあった。

バルメットによる調査と数回のフェルトトライアルテストにより、フェルトの仕様が非常にオープンなため含有水分の少ない状態で運転され、ニップ下で十分な水圧が発生していないことが分かった。100%織基布のラミネート構造に湿紙側に特殊な柔らかい基布を持たせた Valmet Press Felt SMPを装着した。フェルト仕様が吸引能力に適合し、より多くの脱水を果たし、またニップ下での圧縮性に優れるため、効果的に水圧が発生するようになった。フェルトとバットの最適な組み合わせと柔らかい上層基布のおかげで、含有水分の少ない状態でもフェルトマークが最小限になっている。

真空系システムの最適化

次に真空系システムに注目し、ピックアップロールからの紙落ちと、トランスファーサクションボックスの吸引力の低さによる湿紙がトップワイヤーに追従する傾向を軽減させることを目指した。これに対処するには真空ポンプを開ける必要があった。サクションボックスのカバーを多孔式に交換したことで、サクションボックスの脱水性能が向上した。エアーフローの低減により、真空装置の制御調整も少なくなり、また予備真空ポンプを閉じることができた。真空装置を最適化したことでフェルト寿命も長くなった。

シートのドライネスとロールパフォーマンスのさらなる改善

シートのドライネスとロールパフォーマンスをさらに改善するため、Valmet Press Roll Cover PPを 2Pに装着適用した。Valmet Press Felt SPM装着、真空装置の最適化に加え、この変更によりすぐに良好な運転結果が現れた。プレス後の平均ドライネスは 49%から 51.6%へと即座に上昇し、第2プレスの総運転負荷は 14%まで低下した。新しいカバーを装着したプレスロールは水冷の必要なく運転でき、これもコスト削減につながっている。

トレーニングが将来も優れたパフォーマンスを約束する

プロジェクトの最終段階では、この改善結果と優れたパフォーマンスを維持する方法について工場スタッフへのトレーニングが行われた。

「バルメットは私たちのパートナーであり、改善プロジェクトに素晴らしいサービスとサポートを提供してくれました。ですから、私たちの PM2改善プロジェクトを 4段階で取り組んでくれたバルメットチームにお礼を言いたいと思います。」 Thai Cane Paperの生産本部マネージャー Sontaya Tunsaranuwat氏は話す。

少ない蒸気消費量、長いフェルト寿命、エネルギー節減

全体を振り返って、本プロジェクトの成果は印象的であり、中でも平均蒸気消費量が時間あたり 45.6トンから 40.2トンに減少したことは最大の成果である。フェルトの空気透過性を適切にし、合わせて多孔式サクションボックスカバーと真空系システムの改造により真空度を最適化したことで、紙落ちをおこすことなく恒久的に真空ポンプを閉じておくことが可能になった。サクションボックス真空度への助言、バルメットのプレスフェルトとロールカバーによって、プレス後のドライネスが向上し、フェルト寿命が延び、品質も向上した。バルメットのプレスフェルトとロールカバーは、ニップ脱水能力を改善し、運転負荷を軽減させ、その結果エネルギー節減にも貢献している。

この共同プロジェクトの実施においては、プレスフェルト、真空系最適化、ロールカバー、サービス、トレーニング、工場とバルメットの協力といったすべての要因が、その成功に不可欠であった。

Summary of benefits