ドライヤセクションでの最適化されたドクタリングによるエネルギーの節約
2024年4月22日月曜日
ドクタリングによって製紙工程のエネルギーを節約するには?
ドクタリングを最適化することで、板紙抄紙機や抄紙機のエネルギー消費量を削減できるだけでなく、乾燥能力の向上、操業性の改善、ドクタリングコストの削減、廃棄物の低減といった追加のメリットも得られることをご存じだろうか。
しかも、これらは大規模な設備投資や長期の投資回収期間、長期間のシャットダウンを必要とせずに実現できる。そう、可能である。バルメットのドクター製品と最適化されたドクタリングプロセスにより、あらゆる生産ラインの性能を損なうことなく、エネルギー消費の削減が可能となる。
ほとんどすべてのロールとシリンダにはドクタリングが必要である。ドクターの主な機能は単純で、シートの破断や通紙時にシートを掻き落とし、ドクタリングされたロール表面から余分な水分や汚れを除去することである。最適なドクタリングプロセスの鍵は、最先端のブレード材質、最新のロールカバー、そして適切なドクタリングパラメータにある。
長年にわたり、バルメットはロールカバーやドクターブレードの材質技術に関連する数多くのイノベーションを開発し、エネルギー、化学薬品、原材料の節約を目指したソリューションをますます重視している。最近では新しい持続可能な低摩擦ドクターブレードを発表し、板紙抄紙機・抄紙機のドライヤセクションでのエネルギー効率をさらに向上させるのに役立っている。
ドライヤセクションにおける大幅な省エネルギーの可能性
ドクタリングポジションの総数は生産ラインによって異なるが、現代の板紙抄紙機・抄紙機では通常 50~120のドクターが使用されている。ドクターブレードをロール表面に押し付けると、ブレーキ効果、つまり摩擦が発生する。言い換えれば、マシンライン上には 50~120の物理的なブレーキ(ドクターブレード)があり、電動モーターによって発生する速度を減速させようとしている。これらの物理的なブレーキの約 50~90%はドライヤセクションに配置されている。
次に、ドライヤセクションは、マシン速度、シートの水分プロファイル、破断頻度、そして全体的なエネルギーバランスと電力消費に影響を与える。その良好な操業性は、トラブルのないドクタリングとクリーンなシリンダに依存している。ドライヤシリンダの数が多いため、ドクターブレードとシリンダ間の摩擦がわずかに減少するだけでもセクション全体で数倍になり、かなりの節約を実現する。
理論的な計算では求めることができず、経験的に測定する必要がある実効摩擦係数は、いくつかの要因に依存する。特にドライヤセクションでは摩擦が高くなることが大きな問題となることがある。これは、複数の高温のドライヤシリンダが潤滑なしでドクタリングされるためである。ドライヤセクションの立ち上げ時に発生する問題の多くは、静摩擦係数が動摩擦係数よりも高いことに起因する。このような条件では、モーターやギアボックス、その他の動力伝達部品に過負荷がかかることも珍しくない。さらに、ドライヤセクションの高温多湿な環境は、常にドクターブレードの材料に負荷を与え続ける要因となっている。
従来のドクターブレードの材質、例えば 銅、スチール、ガラス繊維などは、摩擦係数が比較的高いため、エネルギー消費が増加する。 それにもかかわらず、比較的低コストであり、長年の工場慣行として定着しているため、現在も広く使用されている。言い換えれば、ドライヤセクションは、多くの工場においてエネルギーコスト削減の大きな可能性を秘めた領域である。
バルメットは、革新的なブレード材質の開発に継続的に取り組み、 摩擦テストを実施してその結果を分析し、ブレード材質とその他のドクタリングパラメータの最適な組み合わせを追求している。例えば、ブレードの性能は、ドクタリング対象の表面、ドクターの負荷圧力、ブレードの角度、ブレードの厚さ、マシン速度などの要素を基準に測定できる。
エネルギーコスト削減のためのシンプルなドクタリング改善プロセス
理論や計算によってエネルギー削減の可能性が明確に示されていても、実際の削減効果を確認するためには、特定のマシンで総合的な試験を行い、結果を検証する必要があることが多い。
長年にわたり、バルメットは製紙メーカーがドクタリングに関連するドライヤセクションのエネルギー消費を削減できるよう、シンプルな段階的改善プロセスを採用してきた。このプロセスは、ドクタリングの現状を徹底的に調査することから始まり、 明確なプロジェクト計画と、最適なドクタリングパラメータやブレード材質に関する推奨事項を作成する。また、すべてのドクタリングコンポーネントの機械的状態をチェックし、必要なメンテナンス作業や交換部品のリストを作成する。 さらに、これらのメンテナンス作業やスペアパーツは、合意されたプロジェクト範囲に含めることが可能である。
現在、バルメットが提供するドクタリング製品には、ドクターブレード、ホルダー、アクセサリーを含む包括的な製品ラインアップが揃っている。その中でも特に注目すべきは、すでに述べた新しい低摩擦ドクターブレードである。これらのブレードは、低摩擦フィラー(充填材)を用いた炭素繊維およびガラス繊維強化複合材で構成され、従来にない省エネ性能を備えている。新しいドクターブレードを採用することで、CO2排出量と操業コストの削減が可能となる。 さらに、ブレードはドライヤシリンダのクリーニング性向上にも貢献し、ブレード寿命の延長によりドクターブレードの使用量も削減できる。
最適化されたドクタリングによる優れた結果
最近の実際の試験では、お客様の従来のブレードとドクタリングパラメータを、バルメットの新しい低摩擦ブレードと比較した。まず、従来のパラメータでテストを行い、その後、最適化されたドクタリングパラメータで再テストを実施した。お客様から提供されたデータによると、従来のブレードとパラメータに比べ、最適化されたドクタリングパラメータを適用したバルメットの低摩擦ブレードでは、電力消費量が 26%以上削減された。この削減により、エネルギーコストの大幅な節約と CO2排出量の低減が実現した。
エネルギー消費の削減に加え、最先端のドクター製品と改善されたドクタリングプロセスは、工場のシリンダ乾燥能力および操業性の向上にも貢献している。また、紙の品質向上や生産効率の向上に加え、ドクタリングコストおよび操業コストの両方においてコスト削減を実現し、工場の安全性と持続可能性にも明確なプラスの影響をもたらしている。